太郎の荒津山戦記/福岡教育大付属小学校受験記2.集合の体育館

Frco.Don

2010年12月03日 16:05

 グラウンドに面して校舎に沿った踊り場の手前に、「左・男の子」「右・女の子」と、男女で入り口をわける掲示があった。その先の体育館が、受験の控えの場となっている。掲示板から先は、20センチほどの丈の小さなコーンが並べられ、男の子、女の子は、それに沿って体育館の入り口まで進む。

 体育館の入り口は、当然のことながら、子どもたちとつきそいの親とでごったがえしている。

 若い男の先生らしい人が、「上履きにはきかえたら、こちらの注意事項を読んで受付をおこなってください」と立脚式のホワイトボードに、模造紙を貼付ける形で掲示された、注意事項を指しながら言っている。掲示板には何が書いてあってのかは、もう忘れてしまった。大したことは書かれていなかったように思う。

 ごったがえす体育館の玄関の、一番左側によけて、太郎と私は、上履きにはきかえることにした。私たちより後から来た親子が3組ほど先に受付へいった。太郎は、少々あせっているようで、うまく、上履きを収納袋に入れることができないでいる。「入らん」「入らん」と慌てて言う。子どもが脱いだ下履きを受け取って、さっさと袋にしまってやる親もなかにはいたが、わたしは、ここは一つ、太郎を落ち着かせる所だと、わざと、じっくりやらせた。

「だいじょうぶ。両手を使ってゆっくりとやってみたらいい」と言ってやると落ちいたのか、すぐに靴が袋に入った。今度は、私が、同じ袋に太郎の靴に重ねて、自分の靴を入れようとしたが、これがまた入らない。そもそも、袋が小さいのだ。私があわててしまったのでは、せっかく太郎を落ち着かせたものを、元もこもなくなる。そこで、わたしは、必要以上に落ち着いて、改めて袋を手と、ゆっくりと入れてやった。

 上履きにかえて、体育館の玄関をあがると、外のコーンで分けられたままに、男の子と女の子がドアの左右に分かれて入っていく。左側のドアをくぐると、すぐ目の前が受付だ。受付で、受験票を差し出し、確認を受ける。

 バーコード頭の初老に差し掛かる事務のおじさんらしい人と、メガネで、おだやかな表情をたたえた、やはり初老にさしかかるかなと思われる歳の、いかにも先生という感じの女性が長机の受付に並んで座っている。

「157番 清田太郎です」と言いながら太郎が受験表を差し出す。

と、女先生の方が、表情は相変わらず、おだやかなままなのだが、「ゼッケンはどうされました」と私の顔を見上げてたづねてきた。

 周りの子ども達を見てみると、なるほど、みんな服の胸の辺りに、受験番号を記したゼッケンを縫い込んでいる。

 私は、一瞬めまいを覚える気がした。

(つづく)


 
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